Sonik Kicks track-by-track review

 

・1曲目「Green」

ウェラーが70年代のドイツの実験的バンドのNEU!からの
影響があったと話している曲。
荒々しいエレクトロニカサウンドで、いきなりウェラーの新境地を見せつけている。

最初から最後まで同じコードでシンセサイザーやフィードバックギターと
左右に揺れるヴォーカル。

歌詞の面ではザ・ジャムの「Pop Art Poem」を彷彿とさせる
フリースタイルの語りかけるようなものとなっている。

 

・2曲目「The Attic」

1曲目に比べて、より複雑なサウンド。

60年代にヒットしたAdam Faithの曲から拝借したと思われる
弦楽器のピッチカート(指で弾く演奏)と1曲目のような激しく
まるでガーレジロックのようなドラムとベースで構成。

歌詞の内容はわびしくも秘めたる愛とのこと。

ノエルがギターで参加しているそうですが、マッドでカオスな楽曲。

 

・3曲目「Kling I Klang」

1~2曲から、さらにドイツの実験的音楽の影響が聞こえてくる。
クラフトワークのような奇妙なバックトラックと
戦前のベルリンのキャバレーを思い起こさせるような爆音メロディー 、
そこに少しだけ西欧の民謡がミックスされた曲。

一聴すると、華やかでお気楽さも感じられるが、
実は中東の戦争について歌ったシリアスな歌でもある。

 

・4曲目「Sleep Of The Serene」

ストーン・ローゼスの2代目ギタリストで、ウェラーの『22 dreams』でも共演した
アジズ・イブラハムが参加している曲。

全編、インスト(歌なし)で、ウェラーとアジズが、それぞれ別のパターンを
即興で弾いて、そのカオス的なサウンドを繋ぎ合わせ、
そこに弦楽器の美しいメロディーラインがそそがれている。

ジ・ハイ・ラマズのショーン・オハーガンがアレンジを担当。

 

・5曲目「By the waters」

4曲目につづいてイブラヒムとオハーガンが参加。
この曲は『ワイルドウッド』っぽさを感じる牧歌的バラード曲。

ニック・ドレイクを彷彿とさせるやさしいギターと
オハーガンによるストリングスアレンジで、
とても深みをもつ楽曲になっている。

 

・6曲目はThat Dangerous Ageなので割愛

 

・7曲目「Study in Blue」

この曲はウェラーと新妻のハンナによるジャズ・デュエット曲。
曲の中ごろからは、とても趣のあるグルーブを感じられる。

スタイルカウンシルの頃の面影もあるサウンドで
ウェラー本人いわく、アルバムの中でももっとも素直な曲。

歌詞は今までのウェラーの曲の中で、最も深く「愛」について
歌われた曲と言っていい。

 

・8曲目「Dragonfly」

一番下の娘さんが学校の宿題で書いた詩をヒントに書かれた曲。

その詩の小節の最初の1行をつなぎ合わせで作成したとのこと。
グレアム・コクソンがギターとハモンドオルガンで参加。

 

・9曲目「When Your Garden’s Overgrown」
以前のインタビュー↓http://paulweller-jp.net/?page_id=1046 でも話していたように
シド・バレッドの人生からインスパイアされた曲。
ノエル・ギャラガーがフィードバックや怪しい音をギターやベースで奏でている。

 

・10曲目はすでにiTunesでも購入可能な「Around The Lake」

クラウトロックやゴスっぽさ、単調なコーラスはJoy Divisionっぽさを感じさせますが、
しかしながらジャムっぽいリフも聴ける。

ちなみに、The JamはマンチェスターのFactoryの創始者のトニー・ウィルソンの
番組でJoy Divisionと共演したことがあります。(※共演というか同じ日の出演)

 

・11曲目「Twilight」

4曲目の「Sleep of The Serene」と同じく
インストロメンタル(ウェラーの言葉を借りるとサウンドスケープ) 。

この曲は長いセッションからカットアウトされた曲で、
ひたすら唸るシンセサイザーの音が20秒という曲。
ロングバージョンは、ボーナストラックかB面楽曲の可能性あり。

 

・12曲目「Drifters」

オーシャン・カラー・シーンのスティーブ・クラドックとの共同作曲。
スティーブはギターでも参加。

フラメンコのような妖艶でミステリアスなリズムだが、
ジョン・コルトレーン的な力強いジャズも感じる。

さらに哀愁ただようボーカルラインはジョージ・ハリスンの実験的な作品を彷彿とさせるが、
ギターはパンクっぽく怒り狂って弾いている。

 

・13曲目「Paperchase」

亡くなった人間のための静かな哀歌。
チャクチャクとなるギターに控え目なハーモニーは、
ブラーの『ビートルハム』あたりの楽曲を彷彿とさせる。

ウェラー曰く、ドラムのループ(繰り返し)を使って、あっというまにできた曲。
今ままでになかったような作業だったらしい。

歌詞の内容は、ウェラーの友人だった歌手のエイミーワインハウスと
ファッションデザイナーのアレクサンダー・マックイーンの死から
影響されたものだと思われる。

 

・14曲目「Be Happy Children」

『ワイルドウッド』の「ムーン・オン・パジャマス」以来となる
子供たちへ歌った曲。 父性愛を感じる。

全曲の中で、 最も心に訴えかけるポップソウルでウェラーの声が生える

6歳になる息子さんのマックと以前紹介したモデルもやる娘さんリアーが参加。

マックのかわいい声もさることながら、リアーの声が彼女の母親で、
ウェラーの前妻であるD.C・リーに似ているのに驚く。

アルバムの最後を締めるのにふさわしい曲である。